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古文の書き方 助詞@ 接続助詞

これより先は小手先テクニック多し。しかれども、このテクニックあらば、やすく古文がごとき文と見せしめむことも可なり。今回は接続助詞を紹介し奉らむ。現代語の接続助詞は「や・が・けれども・ところが・のに・から・ので・て」なり。

条件・理由

仮定、条件や理由を書かむと思ふ折に、「ば」を使用せむ。現代語にもある用法なれど、
手前は動詞なり。手前の動詞の活用形によりて、意味は激変す。
現代語の感覚とたがへるところあれば、注意すべし。使用頻度No.1の接続助詞なり。
(ex)雨降れば、え参らず。
(ex)雨降らば、え参らず。
雨の降れるは、いづれにて侍る?前者なり。かくのごとく、接続によりて意味の変ずれば、「ば」の使用時は注意したまへ。

逆接の仮定条件もあり。現代語の「たとえ…であっても」的なるものなり。こは、「とも」を使用すべし。
(ex)雨降らずとも、な参りそ。

シンプルに理由を説明せむとするものに、「に・して」あり。
(ex)
(ex)

順接

シンプルなる接続をせばや、と思す折には「て・で・つつ」のいづれかとせむ。 この3つにて文をつなぐ折は、主語を書かでよし。主語が同じきことの多ければなり。

「て」は、シンプルなる動作の接続なり。接続は連用形なり。
(ex)中納言参りたまひて、紙引き出でて、…(ry

「で」は、前の動作を打ち消して、接続するものなり。接続は未然形なり。逆接に似たれど、逆接にはあらざらむ。現代語にて申さば「〜しないで」の意なり。似たり。
(ex)宿題をなさで、すずろに日々をすぐしけり。

「つつ」は、前の動作と並行して別の動作をすることをあらはす語なり。現代語とかはらず。
(ex)物語読みつつ、そばすするほどに、本が…
「つつ」に似たる語とて、「ながら」あり。しかれども、この用法には「現代語感」あれば、「つつ」を使用せむぞ妥当なるべき。
(ex)蛙の声聞きながら歌詠む。
ながらには、「そのまま」の意もあり。「昔ながらの中華そば」的なるものなり。

「を・に」も順接の用法あり。この場合は主語変ずること多し。
(ex)御文など見るに、涙もそそきにけり。

逆接

現代語の「けれども・のに」など、シンプルなる逆接を書かむとする折は「を・に・が・ど・ども・ながら」を使用せむ。「を・に」は、順接にも使用可なり。「て・で・つつ」と異なる点は、主語の変ずるところなり。(実際は変ぜぬこともあり)
(ex)たはむれせむと来しを、人なければ、泣きぬれて帰りけり。
(ex)御文など見るに、涙もそそきにけり。
(ex)働けど我が暮らし楽にならず
ものを、とすれば詠嘆付きの逆接なり。ものから、ものゆゑと書くともよし。語感にて心地よきものを選びたまふべし。
(ex)伏籠のうちにこめたりつるものを。

まとめ

用法別に書けど、いささか心得がたからむ。表にし奉れば、参考になしたまへ。…さまざまなる教科書に載れるものなれど…。
助詞 接続 意味
未然形 仮定条件
已然形 確定条件
連用形 シンプル順接
未然形 打消+順接
つつ 連用形 付加+順接
して 連用形 理由
連体形 順接
逆接
連体形 理由
順接
逆接
連体形 逆接
已然形 逆接
ども 已然形 逆接
ながら 連用形 順接+付加
逆接
「そのまま」
ものを
ものから
ものゆゑ
連体形 逆接+詠嘆
本来は順接なにがし条件…などあれど、ま、よからむ。書かむとする折にはつゆかかずらはず。

接続助詞マジック

古文における、接続助詞の力はいみじくて侍り。「あな、こは本物のごとし」と思す御方のおおからむ文とならむ。具体例を示し奉らむ。

朝になりぬ。目を開けぬ。寝ばや、と覚えけり。せむかたなし。やをら立ちけり。冷蔵庫の前に参る。戸を開く。水を飲む。テレビを見る。めざましテレビなり。女子アナらうたし。

この文に、接続助詞を入れ、一文にせむ。古文の一文は長し。

朝になれば、目を開けぬれど、寝ばや、と覚えけるを、せむかたなく思ひて、やをら立ちて、冷蔵庫が前に参りて、戸を開きて、水を飲みつつ、テレビなど見るに、目ざましテレビなれば、女子アナのいとらうたかりけり。

いと心得がたき文となれど、あやしげに長き文こそ古文が真髄なり。

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