古文の書き方 用言の活用A
前回に引き続き、用言の活用を紹介し奉らむ。今回は、上一段活用、下一段活用、カ行変格活用動詞の変更を紹介し奉らむ。
上一段活用→上二段活用or上一段活用
現代語における活用のうちにて、上一段活用といふものあり。こは、打ち消しの「ない」をつけし折に、その前の文字がイ段となるものなり。こに遭遇せし折には、一部の例外を除きて、上二段活用にすべし。「閉じる」を例にとりて、説明せむ。「閉じる」は打ち消さば「閉じない」となるなり。「じ」はイ段なれば、こは上一段活用動詞なり。さながら上二段活用とせむ。
こたびは、例外も先に紹介し奉らむ。上一段活用動詞のうちにて、動詞が
「着る」「見る」「似る」「居る」「射る」、古文動詞の「ひる」(現代語の乾く。村雨の 露もまだひぬ まきの葉に…の「ひ」なり。)
ならば、上一段活用とすべし。記憶法として、頭文字を取りて「きみにゐいひ→君にいい日」といふものあらし。
活用形を示し奉らむ。
動詞 | 語幹 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 仮定 | 命令 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
閉じる | 閉 | じ | じ | じる | じる | じれ | じろ | ザ行上一段活用 |
見る | ○ | み | み | みる | みる | みれ | みろ | マ行上一段活用 |
動詞 | 語幹 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
閉づ | 閉 | ぢ | ぢ | づ | づる | づれ | ぢよ | ダ行上二段活用 |
見る | ○ | み | み | みる | みる | みれ | みよ | マ行上一段活用 |
上一段活用は、その動詞を記憶しなば、さながら現代語のごとき活用を適用せばよければ、さしも難からざらむ。
下一段活用→下二段活用
現代語における活用のうちにて、下一段活用といふものあり。こは、打ち消しの「ない」をつけし折に、その前の文字がエ段となるものなり。こに遭遇せし折には、さながらすべて下二段活用にすべし。「明ける」を例にとりて、説明せむ。「明ける」は打ち消さば「明けない」となるなり。「け」はエ段なれば、こは下一段活用動詞なり。さながら下二段活用とせむ。
活用形を示し奉らむ。
動詞 | 語幹 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 仮定 | 命令 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
明ける | 明 | け | け | ける | ける | けれ | けよ | カ行下一段活用 |
動詞 | 語幹 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 | 備考 |
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明く | 明 | け | け | く | くる | くれ | けよ | カ行下二段活用 |
適用の注意点
「さながら」○×段活用にすべし、と書き申せど、こも、原則に例外あり。この話はいささかセンスのごときものを要せど、中二病の心あらば、さしもかたからず。たとへば、「食べる」は下一段活用なり。しかれども、古語にせむ折に、「食べず」「食べて」はあしからねど、「食ぶ」「食ぶる」「食ぶれ」などはえ言はず。いかにせまし?
この場合は、「食ふ」(ハ行四段活用)とすべし。さすれば、古文単語に疎くともやすく、古文のごとき分となすことも可なり。
中二病の心あらば、「くらふ」とせむもめでたし。
(ex)渇望すれど、金色の太陽の化身、くらふをえず。(→好きなんですけど、オムライス食べられないんですぅ〜><)
原則に固執せで、己の直観に従ひて動詞の変更をせむも重要なり。こは、書くうちにならひたまはむ。機会あらば後日再び説明し奉らむ。
「来る」の活用
「来る」は、現代語も古語も、特殊なる活用をするものなり。いづれも、カ行変格活用をとれり。「活用は苦手なれば、記憶容量は少なくあらなむ!」と思す御方は、「きたる(ラ行四段活用)」を使ひて、回避すべし。活用形を示し奉らむ。動詞 | 語幹 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 仮定 | 命令 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
来る | ○ | こ | き | くる | くる | くれ | こい | カ行変格活用 |
動詞 | 語幹 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 | 備考 |
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来 | ○ | こ | き | く | くる | くれ | こよ | カ行変格活用 |
こたびも、長くなりぬれば終了せむ。次回はサ行変格活用、形容詞、形容動詞を説明し奉らむ。ここまでは茶番なり。次回は使用頻度高ければ、いみじく重要なり。
練習
けふの成果を練習にて試みたまへ!★指定されし、正しき文語の活用形にすべし。
@童貞を(捨てる)た者に何が守れるのか→連用形
A紀貫之命なんて服、ダサいから(着る)ないよ。→未然形
B(見る)!人がゴミのようだ!!→命令形
C突然空から女の子が(落ちる)シチュエーションがあればなあ。→連体形
D彼が(来る)ど、結局生卵は爆発しただろう。→已然形
E宇宙人が攻め込むと、当然インフラは(朽ちる)。→終止形
解答はこちらなり。
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