シーンの最前線に立ちたらむ覚悟やはある?
— やむごとなき名言botさん (@meigen_heian) 2012年9月7日
出典
「シーンの最前線に立ち続ける覚悟はあるか? 山口(27)」メンズナックルという雑誌に載っている写真のコピーです。このフレーズで画像検索すると、実際の雑誌の写真が出ます。
注釈・解説
シーン(名)|の(格助)|最前線(名)|に(格助)|立ち(タ四・連用)|たら(存続・未然)|む(婉曲・連体)|
覚悟(名)|やは(係助※)|ある(ラ変・連体)|?
☆シーン、最前線
大変だったのでそのままにしました。特に、無粋ものの私にはここでの「シーン」が何のシーンなのかすらよくわかりません。ストリートファッション業界でしょうか…?
「シーンの最前線に立ち続ける」、ということを「世の中の時流に乗り続ける」と解釈して、「世をときめかしたらむ覚悟やはある?」とするのも、今思えば悪くないかもですが、元ネタが迷子になりそうですね。
☆存続の助動詞「たり」
「立ち続ける」を、「立ち続くる」とするのも悪くないのですが、つまらないので存続の助動詞を使って「つづける」感を出したつもりです。直訳すると「立っている」、という感じです。もしかしてちょっとずれている…?
「たり」は、「てあり」(「て」は完了の助動詞「つ」の連用形か?)から来たもののようです。基本の意味は「存続」で、文脈によっては「完了」の意味になります。
(ex)
☆「む」の婉曲用法
「む」は文のラストについて推量や意志、適当(…するとよい)などを表すことが多いですが、文の途中に来て連体形になると話が変わってきます。
「む」のあとに名詞がくっつくと、「…するような」といった意味の婉曲の意味になります。ちなみに、「む」のあとに助詞が来ると「…としたら」といった仮定の意味になります。
@「死なばや」といはむ女君が死ぬるためしなし。(→死にたいというような女性が死んだためしがない)
A死ぬべく覚えども、出家せむはさすがにつらからむ。(→死にたいとも思ったが、出家するとしたらやはりつらいだろう)
☆反語の係助詞「やは」
係助詞「や」はもともと疑問と反語の係助詞で、係り結びを起こします。対応する文末(結び)が連体形に変わります。これにさらに係助詞の「は」をプラスすると、反語であることが強調できます。(文脈的に反語じゃないこともあるようなので注意!)反語にすることで、「覚悟はあるか?フッ、どうせないんだろ??」的な傲慢感を持たせたつもりです。
(ex)覚悟やある? (→覚悟はあるか? or どうせ覚悟はないんだろう?)
(ex)覚悟やはある? (どうせ覚悟はないんだろう?) ☆覚悟
今回、さらっと「覚悟」と書きましたが、実は平安時代の「覚悟」は仏教語です。真理に目「覚」めて「悟」ることを意味してます。現代語では「あきらめる」のような意味で使われていますが、仏教では「諸行無常を自覚して、あきらめること」を重視しているので、「心理を悟る」ことと「あきらめること」は似ているものがあります。古語の「あきらむ」も、「明らかにする」という意味ですし…。
さて、今回の話です。現代語の意味も古語の意味も似ているのだとすると、この人は「やれやれ…俺はシーンの最前線に立ち続ける運命なんだよな…フッ」という気持ちがこの一語に現れている、と言えます。
…ハハッ
関連項目
類似文法事項今しあるこの講堂こそ、我らが武道館なれ!
許さじの心地にぞなれりける。
ソウルジェムなむ魔女を出ださばみなは死ぬより他になし!
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