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古文の書き方 助動詞G 推定=根拠つき推量

根拠ありて、「こは"あてかん"にはあらず!」といふことを強調せむとする折には、推定の助動詞を使用せむ。その根拠の別によりて3種あり。

らし(客観的)

接続は終止形(ラ行変格活用ならば連体形)なり。活用形を示し奉らむ。
助動詞 未然 連用 終止 連体 已然 命令 備考
らし らし らし らし 無変化(!!)

意味は、客観的なる根拠に基づく推定なり。例を示し奉らむ。
(ex)蝉の声聞こゆ。夏来たるらし。
蝉は、春にも秋にも冬にも鳴かざらむ。誰が聞くとも、蝉の声より夏以外の季節を思す御方はあらざらむ。(はっ…せ…蝉は秋の季語…?)とまれ、かくのごとく、客観的なる根拠より推定、推量する折には「らし」を採用せむ。しかれども、使用頻度はさしも多からず。

めり(視覚)

見え+ありより派生する語なり。目よりの情報による推定をせし折に採用す。接続は終止形(ラ行変格活用ならば連体形)なり。
助動詞 未然 連用 終止 連体 已然 命令 備考
めり めり めり める めれ ラ変型

もとは「あり」なれば、活用語尾はラ行変格活用にて侍り。
意味は二つあり。
@推定
目で見し情報を根拠として推定せし折に使用す。根拠こそあれ、客観的なる推定とは異なりて、主観的なる判断なり。例を示し奉らむ。
(ex)影ぞ見ゆる。人のあめり。
影は視覚情報なり。客観的には、影あれども人形の可能性、人型に重なりぬるカエルの可能性(????)などもあり。「人のある」といふことの根拠とては客観性はなからむ。……かくほどに考えでも、まことに客観的なる根拠はをさをさなければ、深く考えで「めり」を採用してむ。
A婉曲
「む」と同じき用法なり。

なり(聴覚)

音(ね)+ありより派生する語なり。耳よりの情報による推定をせし折に採用す。接続は終止形(ラ行変格活用ならば連体形)なり。
助動詞 未然 連用 終止 連体 已然 命令 備考
なり なり なり なる なれ ラ変型

もとは「あり」の活用語尾なれば、こも、ラ変型なり。
意味は二つあり。
@推定
めりのごとく、耳寄り来たる情報より主観的に推定する語なり。例を示し奉らむ。
(ex)大きなる足音す。我が子の帰るなり。
足音より、己が子の帰宅を推定すれど、主観的なることは、はたいふべきにあらざらむ。
A伝聞
他人より聞きしことを伝えむとする語なり。例を示し奉らむ。
(ex)物語といふもののあなるを、
「物語といふものあり」といふ情報を聞きて、そを表現するものなり。

★音便
終止形接続(ラ行変格活用の場合は連体形接続)の助動詞の場合、音便をとること多し。
(ex)あるべし→あんべし→あべし(読みは「あんべし」)
(ex)ざるめり→ざんめり→ざめり(読みは「ざんめり」)
(ex)なるなり→なんなり→ななり(読みは「なんなり」)
我々書く側は、「あるべし」「なるなり」「ざるめり」などと書きてつゆ悪しきことなからめど、音便を採用すれば、より古文のごとき文となるべし。個人的には、「べし」の場合はをさをさ音便は使はで、「めり」「なり」は使ふこと多し。

今回は以上なり。次回は「断定」の助動詞を紹介し奉らむ。
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