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古文の書き方 助動詞F ブラインド推量・反実仮想

目に見えぬことを推量する語なり。さて、いかなることぞ?

らむ

接続は終止形、ラ行変格活用動詞の場合は連体形なり。活用形を示し奉らむ。
助動詞 未然 連用 終止 連体 已然 命令 備考
らむ らむ らむ らめ む型

「む」の活用の上に「ら」が乗りしのみなり。やすからむ。

意味を示し奉らむ。
@現在推量
目に見えぬ対象を推量する語なり。なのめの推量にても代用可なる心地す。しかれども、「む」は未来のことの推量なれど、「らむ」は確証なき現在のことの推量なり。
(ex)風吹けば 沖つ白波 竜田山 夜半には君が 一人越ゆらむ
(ex)今し通れる救急車を見るや?我に失神せし女の乗るらむ。(今救急車通ったろ?俺に気絶した女が乗ってるぜ?)
(→今し通れる救急車を見るや?我に失神せし女の乗るなり。(傲慢度アップせり。断定の助動詞は、後述))
A現在原因推量
現在に起こりぬる行動の原因を推量せむとする語なり。原因も目に見えぬものならねば、筋は通りたらむ。
(ex)今し通れる救急車を見るや?我に失神すれば乗るらむ。(今救急車通ったろ?俺に失神したから乗ってるんだぜ?)

けむ

過去の助動詞「き」の未然形(昔は「け」ななり)に「む」がつきしものななり。「き」の流れなれば、接続は連用形なり。活用形を示し奉らむ。
助動詞 未然 連用 終止 連体 已然 命令 備考
けむ けむ けむ けめ   

「む」の活用の上に「け」が乗りしのみなり。やすからむ。

意味を示し奉らむ。
意味は、過去版「らむ」なり。過去も目に見えぬものなれば、こもブラインド推量と心得べし。 @過去推量
(ex)千年や過ぎにけむ
A過去原因推量
(ex)遊びをせむとや生まれけむ
おなじみの文。

使用頻度は、「む」「べし」とくらぶれば、いみじく低からむ。余裕のいづる折にても、つゆあしからざらむと思ひ侍り。今回は以上なり。次回は、推定の助動詞を紹介し奉らむ。

まし

「切ない系」助動詞、ましを紹介し奉らむ。接続は未然形なり。
助動詞 未然 連用 終止 連体 已然 命令 備考
まし ましか(ませ) まし まし ましか 特殊形

活用がいみじく覚えがたけれど、 といふことのみ心得ればよからむ。

意味は4つあり。しかれども、実質二つなり。
@推量
「む」と同じき用法なり。しかれども、をさをさなき意味なり。
A反実仮想
現実にはあらぬことを仮定し、現実にはあらぬ結果を夢想する、悲しき助動詞なり。「型」あれば、その型に添ひて使用してむ。
例を示し奉らむ。
(ex)次元を越えましかば、逢はまし。
次元を越えむことは可能にはあらず。次元を越えむことは現実にはあらず。あらず。(重要なることなれば…)しからば、さなる仮定は、事実に反する仮想なり。それにもとづく夢想なれば、反実仮想なり。
B不可能な願望
願望系は助詞を紹介する折にまとめて紹介し奉らむ。いと見ず。
Cためらいの意思
迷へる折の意思を表現す。「いかが」などの疑問詞を伴ふ場合多し。
(ex)いかがせまし…><

今回は以上なり。次回は推定の助動詞、根拠つきの推量を紹介し奉らむ。
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