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古文の書き方 助詞B 係助詞

係助詞は「は」「も」「こそ」「ぞ」「なむ」「や」「か」の全7つあり。

「は」の注意

「は」は、主格の格助詞「の」「が」と同じかるべしと思す御方も多からめど、さしもなし。係助詞の「は」は、他と区別せむとするニュアンスあり。しからば、「比較」の意あること多し。

(ex)僧正遍照は(ry。在原業平は(ry。
かくのごとくに、

「係り結び」の法則

文中に係助詞あらば、文末の用言の活用形の変ずる、といふものなり。強意は、いかなる折も使用可なれば、やまと歌などの字数あはせの折にめでたき力を発揮す。
助詞 意味 文末の語形
こそ 強意 已然形
強意 連体形
なむ 強意 連体形
疑問or反語 連体形
疑問or反語 連体形

係助詞の位置

以下の例文をご覧ぜよ。情景は「うた変」より。

(ex)定家卿、心づきなく覚えて、四条大納言が頬をはたと打ちにけり。
(ex1)定家卿こそ、心づきなく覚えて、四条大納言が頬をはたと打ちにけれ。
(ex2)定家卿、心づきなく覚えてこそ、四条大納言が頬をはたと打ちにけれ。
(ex3)定家卿、心づきなく覚えて、四条大納言が頬をこそはたと打ちにけれ。

(ex)の文は、つゆ強調せぬフラット文なり。
(ex2)は、定家卿を強調す。「紀貫之にも、和泉式部にもあらで、定家卿こそ」といふことなり。
かくのごとく、(ex2)は、理由を強調し、(ex3)は四条大納言を強調す。係助詞「こそ」「ぞ」「なむ」は、強調せばや、と思すところの前つ方に据うべし。疑問の係助詞もまたかくのごとし。

結びの消失・ながれ

(ex2)定家卿こそ、心づきなく覚えて、四条大納言が頬をはたと打ちにけり。
こはいかにすべき?「けり」の文末変ぜざれば、僻事ならむと思す御方も多からむ。しかれども、さしもなし。こたびの文は、「定家卿こそ心づきなくおぼゆれ。」と、「四条大納言の頬をはたと打ちにけり。」の二文の、「て」によりてつながるるものなり。しからば、文末を「けれ」とすれば、意味合いの変ずるものなり。
かくのごとく、接続助詞のありて、結びの無きこともあり。所謂「うっかりミス」の言ひ訳としてよ。

係助詞慣用表現集

係助詞の便利表現を紹介し奉らむ。

・やorか+「は」
疑問と反語は、文脈によりて判断すべきものなり。(もとより意味のぼかさるることも多からむ)しかれども、反語なることをあきらめむと思さば、「やは」「かは」を使用すべし。さすれば、読みたまふ御方の助けとなるべし。
(ex)思ひやはする。(いな、思はず!!)

・こそ+已然形、〜
こそ+已然形の直後に接続助詞抜きにて読点をおかば、逆接の意味となるなり。
(ex)「小銭こそあれ、200円のみなり…」「ATMなどもあるべし。探さなむ。」「残り80円なり…いかにせまし…」「ジュースな飲みそ!」

・「も」+こそorぞ
「も」に、「ぞ」「こそ」を据ゑば、「…さるればいかにせまし」といふ意となるなり。
(ex)烏もこそ見つくれ。
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